湯沢にて古狸の騙しあい

アメリカで出会って日本へ帰国した仲間2名と湯沢の石打丸山スキー場で再会して滑ることになった。SさんとS さんとなるので今回はSM さんとSKさん。SMさんとは勿論、伊豆稲取に移り住んだあのSさん、そしてSKさんはいろんな事を器用にこなす湯沢のダジャレおじさんのSさんである。ともに時期を前後させてLAから永住帰国した私がもっとも気の置けない二人である。それぞれ1歳ずつ離れているが、一番年下の私が一番言いたい放題させてもらってきたありがたい二人である。

 

SKさんは36年間のアメリカ滞在ののち帰国してもう11年になり、私が42年の滞米で帰国して6年目、SMさんは45年の滞在で帰国3年目であるから供に同じ頃渡米してLA、マンモスで楽しい良き時代を過ごした仲間である。SKさんと逢うのは1年ぶり、SMさんとは去年の10月以来である。

 

ヨーロッパで覚え、マンモスの Austria Hofでも飲んだホットワインを飲みたいというSMさんのリクエストに事前にライン上でのやり取り。

「SMさんから面倒なリクエストがあり、湯沢でグリューワインを造ります。皆さんの様な田舎者、、いや、田舎に住んでおられる方々には材料の入手が難しいかと思いますので、都会に住む私が材料を持っていきます。シナモン、クローブ、はちみつ、オレンジを調達していきますので、ワインに入れて沸騰しないように中火で温めるとありますので、SKさんに作ってもらいましょう」

 

30日は朝のうち快晴。7時に家を出ると高速までは混雑していて、長岡のあたりで一時霧で視界が200mほどになったがそれ以外は道路状態は悪くない。高速を降りてお刺身を買って9時半ごろにSKさんのマンションに到着。SMさんはすでに着いていて、3人の再会を喜び、荷物整理ののち、ゲレンデに向かう。ここは石打丸山のゲレンデにスキーイン・スキーアウトのロケーション。

       寒い朝、綺麗な雪景色の中を走行する

       ski in ski outでゲレンデへ

昨年、湯沢から赤倉へとスキー遠征をして以来、3人で滑るのは1年ぶりになる。今日は足慣らし。我々がゲレンデに出ると、急に雲が動き、青空を覆い始める。「どういうこと?」日ごろの行いはいいはずだが?

 

ゲレンデの雪はパウダーでなく圧縮され荒れた雪面。今日は簡単なコースがほとんどのハッカ石口でのエリア限定のチケットで足慣らし。実際、このメンバーで滑れたらスキーはどうでもいいかも、と思える。SKさんの後を私とSMさんが追う。「SKさんゆっくり行こうと言って、全然待ってくれないね」と早くも愚痴るSMさん。彼だけこれが今シーズン初めてのスキーであるから無理もない。

ランチはイタリアンでスパゲティーとビール。

ゲレンデは空いているが、最近耳も悪くなり、周りの声が聞き取れず、中国語に聞こえる、、、と思ったら中国語であった。ここは東京からのアクセスが良く外国人も多いが赤倉の様な白人がメインでなく台湾・韓国のアジアからのスキー客が多いよう。午後から雪が降り出し、気温が急に下がりはじめる。

今日は午後2時前に上がり、大浴場へ。外に降る雪を眺めながら湯舟、サウナに入りリラックス。普段はサウナに入らない私だが、二人との貴重な時間が惜しくて、久しぶりにサウナに入る。サウナは後のビールをうまく飲むためのものと心得る。部屋に戻り、まずはビールで乾杯。SKさんが早速グリューワインを作ってくれる。本マグロのお刺身がうまい。SKさんのメインデッシュは良く炒められた玉ねぎが入ったおいしいビーフカレー。

料理上手なSKさんの焼いた陶器であふれる部屋。アメリカでも陶芸はしていたが、帰国して、いつの間にか南魚沼市の陶芸体験教室で教えている器用な人である。 そんなSKさんが初めて作ったグリューワインは旨くて身体が温まる。

      陶器の器はすべてSKさん作

Day 2

朝から青空が見えている。出かけようとするとマスクを顎にぶら下げて、マスクを探すSMさん。先月胎内スキー場に4回目のスキーに行った帰りに塩の湯温泉に寄った時、脱衣所で「入口の受付の処に財布を忘れた方はいませんか?」というアナウンスに、そこにいた4名のうち3名が一斉にロッカーの自分の持ち物を確認する。そこの一人が言う、「最近、忘れ物が多くて、毎日探し物だって」と、ここにもご同輩がと安心する。誰もが年は取りたくなくとも取るこの現実。何をするにも細心の注意が必要で、それでもカバーしきれないもどかしさ。

 

我々がゲレンデに出ると途端に曇り、雪が降り始めた。我々の中に雪男がいると、SMさんが疑われている。ゲレンデに10cmほど積もった軽い雪で気持よく滑られる。

案内役のSKさん、後をついていくが、たまに先行すると「右」「左」と支持を出してくれるが、たまに右左を間違えるので困る。陰では「古狸」と呼んでいる(ハハハ)

ここのスキー場のリフトゲートの開閉ポールは開いたと思ったら直ぐに閉まる。私が片足を残してゲートにトラップされ、係員が来て開けてくれるまでさらし者になる。薄情者の二人がそんな私を見て喜ぶこと、喜ぶこと。混んでいなかったので良かったぁ。

       厳しい降りになってきた

      山頂にて、左が私、右SMさん

      左、最長年のSKじいさん

   雪の中のスキーも風はなく雪はよくて楽しい

ここのスキー場はゲレンデ内に多数の飲食店が立ち並び、そのラインナップは赤倉の比ではない。イタリアン、ラーメン、丼物、うどん、居酒屋さんまでゲレンデ内にあり、地元の食材を使った料理のレベルは高く、何処で食べても美味い。今日はSMさんのリクエストで焼肉とビール。ゲレンデは大雪になってきた。2時にはあがり大浴場へ。

SKさんの作る夕食はだし汁の効いたとり鍋がまた美味しこと。

Day3

最終日は朝から最高の快晴でSKさんにせかされてゲレンデに。ロッカールームから出て、スキーを履いたら1分でリフト乗り場に着いてしまう。早く着き過ぎて「古狸に騙されたか?」と言おうとしたところでリフトが動き出す。今日のゲレンデは昨夜降った雪が綺麗にグルームされている。今日もハッカイ石口から入り、滑り始める。グルームされてるが昨夜の雪が覆ったまだ誰も滑っていない雪面に描くシュプールが気持ちいい。

ゲレンデにあるレストラン街で今日はドイツ料理店でハンバーグとハーフ&ハーフ(黒ビールと普通のビールを半々で混ぜたもの)のピッチャービール。レストランのトイレは階下にあり、疲れた脚には難所である。SMさんがなかなか上がってこない。SKさんが階段でつまずいてヨロけながら前を行く。

     ゲレンデの中腹のレストラン街

        居酒屋げんちゃん

SMさんは今期3日目のスキーでまだ身体が付いてこず、「ちょっと休みましょう」というと喜び、休憩の後「そろそろ出ますか」と言うと残念がる。スキーに来たのか休憩に来たのか分からない体たらくである。

今日は晴れていて眼下に魚沼平野がよく見える。雪質も最高に近い。山頂から魚沼平野に向かって滑り降りる。ランチを食べると早くに最寄ゲレンデに戻りたがるSMさんにまだ早い時間ではあるがハッカ石口に戻り、SKさんに滑りを見てもらう。先にSMさんは上がり、SKさんと二人でしばらく滑り続ける。

      米どころ魚沼平野と八海山を背景に

      ゲレンデより谷川岳、湯沢駅方面を望む

1時半には上がって買い出しに出てビールと刺身を調達してくる。

夕方LAにいる友人KYさんとラインで会話。彼もまたあと5年ほどで帰国する予定だと言う。我々の年代で子供のいない自由人は退職してアメリカから帰国する人が多い。老後はやはり日本が懐かしくなるのだろう。

 

陶器、食器棚、テーブル、アート作品、何でも玄人肌で作ってしまう器用人のSKさん。アメリカで住んでいた家は売りに出す前に自分でユーチューブを見ながら全面リフォームしてしまった。そんなSKさんが作る今日の夕食のメインはマーボ豆腐。それもSKさんのマーボ豆腐は材料の香料を横浜中華街で買ってきて、インスタントでない素材から作った絶品。私もなんでも料理は作るが、いかに手を抜いて短時間で作って早く飲み始めるかという料理。SKさんは手を抜くことなくプロの料理人の様な絶品の料理を作る。

      登り窯で焼いた陶器の数々

      家具屋さんに売ってそうな自作の食器棚

      丈夫なテーブルまで自作品

    本物のシューズを使ったアート作品

        絶品マーボ豆腐
ダジャレのSKさんも、最近はSMさんに先読みをされてしまう。ここは気づかないふりをして、聞いたことのあるダジャレでも感心してあげる優しさが必要か。

就寝まえにもう一度大浴場へ、SKさんと湯舟でスキー談話でのぼせる。今回の楽しいスキーツアーも明日で終わる。

Day 4

朝、SMさんの荷物を送るためヤマト運輸へ。送り状を早速書き損じるSMさんに、棚に置いてある20枚ほどの送り状に「それで足るかね?」と茶化す二人。その後、SMさんを駅に送り、SKさんとおそばを食べて解散。二人に、「楽しかったです。数々の暴言をお許しください」と、メールを送っておく。

こうして我々は皆、古狸になっていくのであろうが、マンモスで過ごした日々の様な楽しい時間であった。まだまだスキーを続けられますよう。