ラスト・シーズン

アメリカ生活最後のスキーシーズンが始まる。毎日スノーレポートを見るが、今年はまだ雪が少なく開いているコースも少なくコンデションとしては良くない。それでも、気分転換と足慣らしのつもりで日常生活から離れ、マンモスの自然を楽しむのは悪くはない。

サンクスギビングの4連休、水曜日午後に早引けして佐野さんとマンモスに向かう。マンモスの街中のピザ屋さんでピザをテークアウトして9時過ぎにシャモニーに到着。どうも車の温度計が狂っているようで19Fなどと言うアラスカ並みの温度を示している。これは絶対間違い。体感温度は32F(摂氏0度)くらい。シャモニーの駐車場にはうっすらと昨日の雪が残っているが、ほとんど積もってない。ビールとピザそして佐野さんの持ってきたお手製のきんぴらごぼうで遅い夕食。天気予報では、週末に雪が降る予報であるが見るまでは信じない事にしよう。

木曜はサンクスギビング。朝はゆっくりと出かける事にして、佐野さんのリクエストで本格的な日本式朝食。ご飯と、目玉焼き、大根おろしの付いたぶりの塩焼き、納豆、キュウリのキュウちゃん、海苔の佃煮、アマノフーズの味噌汁(インスタントながら、これが美味い)。

朝食を終え、歩いて行けるキャニオン・ロッジはまだ開いていないので、9時過ぎに車でメインロッジにむかう。雲ひとつない快晴。ミル・カフェの駐車場に車を停めてシャトルでメインロッジに行って滑り出すつもりでいたが、駐車場に着くと、スタンプ・アレーのリフトが動いている。私たちの情報不足であるが、サンクス・ギビングの連休の為に雪造りを頑張ってくれたようだ。これは嬉しい誤算。リフトから見ると、中央部分はカバーされているようだが、端は地面、石ころが見え、気を付けなければならない。

リフトを下りて、ゆっくり緩斜面を移動して、フェースリフトに乗り換え。初滑りはフェースの裏側斜面を下りる。この斜面を2本。シーズン初めは今季どの位、滑れるかの体力調べでもある。やはりシーズン初めは足にくる。トレーニングをしていても、実際のスキーでは毎年最初の数日は足の筋力が運動に付いてこない。リフト乗り場でマンモスのマスコットであるウ-リーに挨拶。

雪の絶対量が少ないのはいかんともしがたいが、雪質は寒さのためそんなに悪くは無い。そしてマンボの斜面は結構充分な雪に覆われていたが下に来ると雪質は硬くなる。メインロッジに下りる斜面を滑ると山頂のコーニース以外の斜面は大方滑った事に成る。まあ、此の積雪で11月であることを思えば、こんなものか。

11時には早々とマッコイステーションに入って昼休み。今日はビールとつまみ類、そして昨夜の残りのピザを持って来ている。ゲレンデを見ながらのビールは美味い。テーブルでうたた寝して、午後の部を滑る。途中で雪の薄くなったところに突っ込んでしまい、石ころの上で横滑り。スキーの滑走面に傷を付けてしまった。そのうちの一つは地肌の出るくらいの重症。イタタタ! 午後3本ほど滑ったら、初滑りは終了。マーケットに寄って、不足分の買い出しをして戻る。

昨シーズンまでインターネットのWiFi接続を使わせてもらってた二階のユニットのインタネット接続が出来ない。どうやらオーナーが変わってパスワードが変更されたようだ。夕食の寄せ鍋の準備をして、30分ほど管理棟のビジネスルームにいってメールとニュースのチェックするが接続が悪くすぐに途切れる。帰ってシャンペンで乾杯して寄せ鍋を食べる。そしてさらにワインも一本。

早々と夕食の済んだ後は、恒例の散歩。外はすでに暗く、幾分寒いが、キャニオンロッジまで散歩。闇夜の空は満天の星空。何度も観たマンモスの星空であるが、最後のシーズンと思うと銀河の美しさに感慨無量。帰りがけにシャモニーの向かいのオ-ストリア・ホッフのバーでホットワインを一杯。

早々と寝て、金曜日の朝。今日は幾分風が有るがいい天気。昨日とさほど変わらない時間にでたが、パーキングにはすでに車がいっぱいで、道路に駐車してシャトルでメインロッジへ。


スキーブーツを履くのが年々厳しくなるとぼやくS氏

ゴンドラでマッコイ・ステーションへ。昨夜は雪を作っていないようで、昨日より雪質は悪く、石蹴りをしないよう、注意が必要。
スタンプ・アレーのリフトでまたウーリーに遭遇。
昨日は少し小ぶりのウーリーだったが、今日のウーリーはおっきい。一晩で成長したか?頭のでっかいこいつはストックも持たず、スキーだけはやたら上手い。時々凄いスキーを見せてくれる。

長年マンモスに通っていると、スキー人口の変化を身を持って感じている。40年前に来たマンモスには勿論、スノーボーダーは居なかったし、純粋に白人のスポーツだった。スパニッシュも少なく、異人種は日本人くらいだった。その後、韓国人の間にスキーブームが起こり、韓国人のスキー・ツアーバスが何台もマンモスに来た時期が続いた。そして、2年ほど前からいきなり韓国人の数が少なくなり、中国人が東洋人としては一番の人数をみる。黒人はいまだにいないが、メキシカン、中東人、ヨーロピアンと多彩な人種がウインター・スポーツを楽しんでいる。今季で私は一応、40年に渡ったマンモス通いから卒業する。この盛況がこれからも続きますように。

シャモニーに戻って、インターネットはやはり繋がらない、丁度斜め向かいのユニットの住人が出って来たところに会って、挨拶してインターネットの事情を話す。「日本と連絡を取りたいが、インターネがつながらない。貴方の所のシグナルが届いているので使わせてもらえないか?」要は日本のビールをあげるからWiFiのパスワードを貰えないかという取引である。彼らは男性の3人組で、パスワードを上げる事で、困る事は無い。交渉成立。これでWiFiばっちりである。

土曜は、昨日と変わらない天候で、カレッジ・フットボールの中継のある今の時期は佐野さんはフットボールの観戦に忙しく。テレビで観戦しながら、パソコンで他の数試合の状況を追いながら過ごすというので、私だけゲレンデに向かう。昨日と同じスポットに車を停め、シャトルでメインロッジへ。スタンプ・レーは混んでいるがリフトラインが左右にあり直前に合流する。山に向かって左側のラインがアクセスが制限されるせいか、何時もラインが短く穴場である。滑る降りたら右に右にと行けば三分の一の短いラインに並べる。

23番リフトで山頂に上がる。今日のコニースは雪が少なく、風も強く、この状況が数日続いているので、やばそう。予想通り滑りだし口には、立ち止まるスキーヤーが多数。前に出て斜面をみると、かなりのカチカチの30度以上の斜面で手ごわそう。滑り出すとエッジの効かないスケートリング状態。横に外れて観察すると、エッジが効かないスキーヤー、スノーボーダーが横滑りで下りていく、そこで転倒した人は何人も止まれずに下に向かって滑り落ちていく。やばい部分は滑り出しの30mくらいで、そこから下は幾分エッジが効く雪質になるので、ターン出来るようになる。

23番リフト乗り場

山頂


写真にすると、実際の斜面の勾配が出ない。実感は倍くらいの急斜面


23番リフト乗り場を通って、メインロッジの上にでると、そこはいつもレースの練習コースで、今の時期、まともに滑れるスキー場は北米でマンモスくらいだそうで、全米からレーサーが練習に来ている。そこの隅が今日は開いていて一本滑る。今日は休みなく10本滑って、そのうちの半分はコンデションが悪い中でも、まあまあかと言うマンボのコース。これで今日はあがる。シャモニーに戻ると佐野さんがフット・ボールでいい試合だと、一人盛り上がっていた。夜は持ってきたDVDで映画鑑賞。

天気予報では今夜は雪。それもかなりの積雪量が予報されている。
最高のシナリオでは明日の朝には30CM程の新雪が積もっているかもしれない。
中々、マンモスでもベストと言えるコンデションで滑られる機会はすくない。増してマンモスで新雪を滑られる機会が後何度残されているか。だから天候が悪くても新雪なら滑りたい。佐野さんは「明日の朝にならないとわからないよね」と、雪が20cm以上積もっていて、視界がある程度あれば滑り。期待できなければそのまま引き上げる事に。私としては、新雪を滑れるよう、神の恵みを祈るのみである。

午後4時近く、雪が降り出した。視界を薄く曇らす小粒の雪で、うっすらと地面を覆い、中々積雪が増えないじれったい降り方。そんな状態が寝るまで続く。明日の朝までにどのくらい積もるのか?

夜中に降ったり止んだり。朝方明るくなり、外の駐車場を除雪する音で寝覚める。外を見るとかなりの雪で車のタイヤが半分埋まっている。マンモスのスノー情報をみると、ゲレンデは下部で40cm、山頂で60cmくらいある。朝7時から車の雪かきをして、メインに行くため、数年ぶりにチェーンを履かせる。雪かきは朝から重労働である。


朝食も掃除も後回しにして、8時15分にゲレンデに向かう。途中は昨日と打って変わった雪景色。この天候ではサンクス・ギビングの家族ずれは絶対ビビッて来ないだろうから駐車場もゲレンデも空いているだろうという予測は大外れ。皆、今季初めても本格的な雪を待っていたハードコアがゲレンデを目指し、既に新雪のゲレンデは荒らされている。

リフト係員が雪の中を歩いている。40cmほど足が埋まっているから、かなりの積雪。ここがゲレンデでは一番標高の低い位置だから、全体の雪のカバーは申し分ない。下部のリフトしか開いていないが、充分である。新雪の雪は嬉しい。疲れるが軟らかな雪をスキー板の下に感じて楽しむ。しかしゲレンデが荒れて凸凹になってくると、足への負担も大きい。こうなると早くグルームして欲しくなる。

それでも、佐野さんが少し休んでいる間も滑る。その間にフェースリフトが動き出した。このリフトラインの先頭のスキーヤーは動き出す30分以上前からラインを作って待っていたのを見ていた。バージンスノーを滑るにはそのくらいの根性がないとチャンスはない。リフトが動き、いったん滑り出すと、新雪にどんどんシュプールが付けられていく。我々は今日は午前中だけなのでフェース・リフトはパス。


フェースリフトには動き出す30分前から列が出来始めた


帰り際には薄日が射して来た。そして、スタンプ・アレーの下部でグルームしたゲレンデを少しだけ滑る事が出来た。この雪の恵みは今までの3日間とは大きな違いで、いきなり本格的なシーズンの幕開けである。

4連休の最後に来た新雪を滑れたチャンスに感謝。
帰りにマンモスの街中の「ラーメン屋」で、ランチを食べて帰路に付く。