かぐらで想うーSやんと

四国出身のSやんとLAのリトル東京で会ったのは私がアメリカに渡って1カ月ほどたった頃だった。彼とはその後、中米を一緒に2カ月ほど旅をして、LAに戻りハリウッドで4人でアパートをシェアして暮らした時のメンバーであり、学校に通いながらヤマトレストランで一緒に働き、LAでスキー通いを始めた時のスキー仲間でもあった。彼無しでは私の渡米初期の5年間は語れない親密な友人の一人であった。

 

80年代初期に先に日本に帰国したSやんとは帰国時や、カナダで落ち合ってスキーをしたが、行き違いがありその後15年ほど交友が断たれていた。今年になり、急に彼からフェースブックに私の名前が表示されたと、連絡があり、「湯沢のかぐらスキー場に行ってるので、来ない?」というお誘い。

スキーより懐かしさもあり、会いたかったので一泊で合流させてもらうことに。19日の朝、家を出ると、2時間45分ほどでかぐらスキー場三俣入り口のロープウエイ乗り場に着く。Sやんに電話を入れて12時の集合場所へ向かう。彼はここ数年間多い年は年に90日もかぐらに滞在して、こぶの滑りのレッスンを受けているという。彼が用意してくれたおにぎりをいただき、周辺で滑ってレッスンの終わる3時まで待つ。

今日の雪質は最悪の圧縮された硬い雪面でスキーとしては面白くない。それでもSやんと15年ぶりに一緒に滑れるのが嬉しい。それまでほとんどスキーをしたことがなかった彼をLAのローカルにあるスノーサミットへ誘い、最初にスキーの面白さを教えたのは私である。その後数年間一緒にスキーに通って滑っていた時を思い出す。

1975年の夏の終わりに、4人の同居人たちがハリウッドにアパートを借りて生活を始めた。http://www.skizanmai.com/natsunokaze.htm

最初にKやんが2年ほどで帰国し今は宇都宮周辺5か所くらいで幼稚園を経営している。SやんはUCLAに進み、5年後くらいに帰国した。Nやんだけがアメリカに今も残り、日系の大手日本食料品卸会社の副社長になっている。その日本に帰ったSやんはA株で財を成し、一般の人から見れば破天荒な人生で、働かずに左うちわどころでない大うちわで後ろから扇がれ未だに追い風をうけて悠々自適な生活をしている。

 

ハリウッドのアパートを借りたあの日、「僕たち、また一歩ベバリーヒルに近づいたね」と言った日本から飛び出した4人の若者は、偶然にあの場所で出会い、一緒の時間を過ごし、その後それぞれが人生を生き、ベバリーヒルスには暮らせなかったが、40数年後の今、皆しっかりとした生活の基盤を築いて暮らしている。

 

スキーは午後の時間に南向きの斜面が緩み幾分楽しめたが、それ以外は良くなかった。ここは東京からの便もよく、春遅くまで開いているので、春先のこぶ斜面が有名なスキー場である。そのこぶもこれだけ硬い雪面だと試す気にもならない。Sやんはここの定宿「いたしん」にスキー道具などいろいろ預けたまま、毎年何日間も瘤のレッスンを受けていて、多いときはこの宿にシーズンに90日も泊まっていたそうで、おかみさんに「私はあなたの奥さんでもないのに、なんで毎日食事を作らなければならないのか」と、言われるほど親しく入り浸っていたそうである。

 

WBCの侍ニッポンの全7試合を観た。日系選手のニュートバーが話題となり、日本での予選からどんどん盛り上がり、スキーから帰った翌日からアメリカで開かれた準決勝と決勝は私が今まで見た野球の試合の中で特出して感動的な試合であった。私は2019年に3週間アメリカにリターンした時に幸運にも目の前で大谷のホームランを見ることができたが、アメリカに渡った大谷の姿を普段日本ではなかなか観る機会がない。

負けたら終わりの準決勝のメキシコ戦での9回裏の大逆転は最後まで息をもつかせない試合で野球の面白さを集約したようなゲームであった。

 

そして一発出たら逆転される決勝戦で最後に大谷が投げた相手トラウトは同じエンジェルスの3度MVPを取った偉大な4番打者であり、普段は大谷の大の仲良し。今回のアメリカ側のキャプテンであり、もうトラウトの年齢を考えるとアメリカの野球ファンにとって普段は同じ球団のこの二人が対戦する事はないと思われていた夢の組み合わせであった。

 

それがあの最後の場面で投手と打者としてまみえるのはあり得ない漫画(アメリカで言ったら映画)のようなストーリーだった。この準決勝、決勝はいずれも長く語られるであろう感動的な名勝負であった。結果は見事に三振で討ち取り、終わってみれば大谷に始まり、大谷に終わったようなWBCであったが、最高に面白かった。大谷の生きざまは才能が有るだけでなく、努力があっての賜物とおもう。驕ることなく常に相手をリスペクトするヒーローは すでに日本の誇りであり、これからも野球を志す者の目標であり続けて欲しい。

 

未だにテレビではWBCが語られ、まだあの感動の余韻が残り冷めやらぬ中、ここ新潟でも早くも桜が3分咲きとなり、間もなく私の今期のスキーシーズンも終わろうとしている。

 

今週のミーちゃん

      テレビの前で、そこにいると邪魔なんだけど

        猫は気まま、でもやっぱり可愛い

     じゃらし棒で遊んでやる。