豪雪−3

日曜の朝、日が射している。昨夜は雪が降らなかったので原則昨日と同じコンデションか。でもかなり広範囲にグルームされていると思うので、今日はグルームされた斜面を中心に滑ろう。

昨日と同じコンデションを覚悟して出かけたスキー、最初に5番リフトからのコ−スを滑ると、昨日とは打って変わった雪質になっていた。グルームしたこともあるが、夜間に吹いた風で正面の雪が飛ばされ、均されて、驚くほど良いコンデションになっている。昨日、悪戦苦闘した斜面が今朝は嘘のように滑り易い雪質である。
5番をもう一度上がり、マッコイへトラバスする。途中は狭い凸凹コースを下りなければならないが、今日はショートターンを楽しんで一気に抜ける。佐野さんと、「いいね〜!」と顔を見合わす。


5番リフト降り口の見晴らし

スキーは昨日は深雪に良いヘッドのスキーを履いていたが、今日はストックリー。今日のスキーの方がショートターンには良いスキーで、軽く、楽にターンが出来る。雪質も軽いので昨日の半分の力で滑られるので、楽しめるスキーができる。昨日の悪戦苦闘は歳のせいではなかったんだと安心する。


そのままフェースリフトに乗り、裏側のコースを滑る。気持ちよく滑れて、ついつい早いペースになる。佐野さんを待つつもりでスローダウンして後ろを振り返ると、すぐ後ろにいたので、予定変更して滑り続ける。佐野さん今日は気合がはいっているぞ。
途中で西山さん達ふたりを見つけて、挨拶をしていて、佐野さんに追い越された事に気づかず、上ばかり見てまっていたら、すでに3番リフトラインで私を待っていた。

もう一度上がって、今度は昨日ヒーコラ言わされたウェストボールにリベンジに向かう。これがまた気持ち良い雪質で、一度止まっただけで下までショート・ターン。今朝のこの数本だけでも今回マンモスまで来た甲斐があった。

一度マッコイで休んでいるとアッパー・ゴンドラが人を乗せている。昨日開いていなかった山頂へのアクセスがオープンしたようだ。「行くなら今でしょう」と、ゴンドラで山頂を目指す。途中ですでに雲が下りて来ていて視界が悪くなってきている。ゴンドラを降りて、しばらく展望台で視界の快復を待つが、状況は変わらない。
その間にも何人かがデービスランへ向かっていく。待っていても回復する兆しはない。我々も最初からのターゲットであるデービスランに向かうことにする。

外に出ると、それでも30−40mほどの視界はある。これがだけコースが見れればとデーヴィスランに向かう。展望台の裏側に回りこむ様にして、50m程進むと、前方がスッポリと雲で覆われていて、戻ってくるスノーボーダーがいる。これはヤバイぞと、私が立ち止まって後ろを見ると、佐野さんもすでに止まっている。このコースはロープも張って無く、視界が利かないとスキー場の地域外の山の裏側に迷い込む可能性もある。我々も安全策を取って、一般的なコーニスを下りることにして、山頂へUターン。坂道を戻るのは大変だが、この判断は正解と思える。


ゴンドラ降り場にある展望台から出てくる佐野さん


雪に埋まった山頂のサイン


山頂はすでに雲の中、待機するが良くなる気配はない

山頂はほとんど視界がなくなっていた。しかし、戻りのゴンドラも止まってしまったので、下りるしかない。コーニスなら視界がなくとも迷わずに知ってる所に下りられる自信がある。ほとんど視界がなくなり、頼れるのは両側の柵と、ロープだけがかろうじてみえる。コーニスの降り口らしいところにたどり着いた時には完全にホワイトアウトして上も下も何も見えない。

私が先導して、急斜面を横滑りで下りるが、方向は何とか抑えているつもりだが、どのくらい進んだかの距離感がまったく分からない。自分が動いているのか、止まっているのか、どの角度で斜面に立っているのかも分からなくなる。普段どれがけ見える物で身体が自然に対処しているかを思い知らされる。

私からは、ともかく見えるのは上にいる佐野さんだけ、下はまったく何もみえないホワイトアウト。この状態が知らないスキー場であったら、パニックになってもおかしくない状況であるが、幸いここは何100回と来ているホームグラウンドであり、最悪でもマッコイに下りるはすがメインロッジに下りてしまうくらいである事を知ってるから、この状況を楽しむ余裕がある。


上を見ればかろうじて降りてくる佐野さんが見える

下を見れば何も見えない白一色のホワイトアウト

途中少しコースの横が見えた時、もっと右に方向を修正。かなり下りたと思えるところで、フェースリフトの裏から降りてきたスキーヤーと合流。さらに下りると段々と視界が開けてきたて、西山さんとも会えた。
めったにないほどのホワイトアウトの経験も今回の希少な体験であった。山を侮ってはならない。ホワイトアウトで道に迷い、命を落とす人もいるのである。

無事に戻ったが、さらに雲が下りてきていて、フェースの上も見えていない。これでアガルことにしてキャニオン・ロッジへと向かう。途中で好きなコースであるアクトの瘤を一気に下りる。佐野さんも前を行く。


アクトの斜面、ここで立ち止まっている人の間を一気に下りるのは快感

最後に8番リフトでレッドウイングを滑って、キャニオンロッジを右手に見て、なるべくシャモニーに近いと所まで行ってスキーをはずす。
お疲れ様でした。今日は山頂以外は凄く良いスキーが出来た。

シャモニーに帰って出発前に残りのご飯と生食用の卵で、卵かけご飯と、つけもの、そしてトン汁。昨日今日でかなりの運動量をこなした身体に染み入る食事である。日本人でよかった。

佐野さんが手袋の片方がないと言い出すが、すぐに見つかった。何処にあったかは、佐野さんの名誉のために言わないで置こう。どうしても聞きたいという方は個別にお問い合わせを。

まとまった雪が降ったとはいい、雪不足、水不足の状況が解消された訳ではない。例年に比べてもまだ、はるかに少ない。それだけに今季の最初で最後かも知れないまとまった雪の恵みにスキーヤーが押し寄せたのである。

今回も、楽しいスキーであった。