湯沢と妙高でスキー

久しぶりの長編です。

一月中旬、本格的な冬らしくなり、ローカルで滑って備え、待っていたスキーツアーに出発する。今回の主な登場人物はどちらもSさんなので湯沢のSKさんと三島のSMさんと記述する。元々、湯沢で三人で一緒に滑る計画をたて、「私は其のあと赤倉へ行くよ」と言ったら、SMさんも行きたいと言い、SKさんは私らの付き添いで行きたいと言う。

 

45年前にアメリカで出会った親友SMさんと、楽しい性格の持ち主SKさん。SMさんが一歳、SKさんが2歳、どちらも私よりわずかに年上。3人ともアメリカに35年以上暮らし、一緒にマンモスをベースにスキーをしていた仲。9年ほど前にSKさんがまず帰国し、4年前に私、一年前にはSMさんが無事に日本へ永住帰国した。日本で3人が揃うのはこれが2回目になる。気の置けない仲間であり、一番一緒に滑りたい二人なので、赤倉も行けたら楽しいのは判っている。

 

予定では1月15日から湯沢のSKさんの所に3泊して湯沢の石打丸山スキー場で2日間滑り、18日の朝、妙高赤倉観光スキー場へ移動して2泊で3日間滑り、20日に湯沢に戻り、まだ体力が残っていれば21日の午前中滑って解散。コロナ禍でのスキーツアーなので、いろいろコロナ対策は考えている。湯沢で3人集まったらまずは抗原検査をして安心してかってと同じように過ごしたい。

 

新潟県の山間部を含む地方は数日前から大雪に見舞われ、交通規制を受ける道路も出てきた。湯沢へ向け出発の朝まで雪が降っているが、新潟市内は気温は0度以上が多くて湿った雪でほとんど積もっていない。SKさんのマンションは湯沢石打丸山スキー場のすぐふもとにある。途中の道路状態が良ければ2時間すこしで着くはずである。SMさんは三島から新幹線で湯沢に午後1時ごろ着くと言うので、私は道路状態も落ち着くと思える10時少し前に新潟市を出る。

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         道路の右端を示すブルーに色付けられた高速道路

長いスキー旅行であり、湯沢から赤倉は3人分のスキー道具を乗せなければならないので結構荷物が増える。途中、少し速度制限を受けるも、雪に降られる事も無く、2時間半ほどで、湯沢に到着。三島のSMさんは12時58分に新幹線で湯沢に着くので、SKさんに連絡をすると、「既に駅の近くにいるので駅で会いましょう」と言う事になり、直接湯沢駅に向かう。

 

駅でSKさんと会って、しばらくするとSMさんも到着。久しぶりの再会を喜び合い、石打丸山のski in ski out の出来るSKさんのマンションへ着く。まずは、3人安心して密で過ごせるようコロナの抗原検査。少し、ドキドキしたが結果は3人とも陰性。これで安心して3人の時はマスクを外して過ごせる。3時から温泉ではないが大浴場に入り、4時から料理もプロ並みの腕を持つSKさんが美味しいつまみ、食事を作ってくれて宴会が始まる。マンモスのコンドで「いないないバー」と称しSKさんに料理を振るまってもらった日々を思い出す。

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SKさんの作品のほんの一部

そこでSKさんが衝撃の告白。「私、恥ずかしながらこの歳で、去年の暮れに結婚いたしました」という。聞いた瞬間「え?財産目当て?」と言う処だったが、人格者SKさんがそんなことをするわけがない。70代での結婚は、コロナ禍で結婚式はせず、婚姻届けだけ出したそうだが、お相手はSKさんが湯沢でやっている陶芸教室の生徒だった方。「え?生徒さんに手を出したの?」と言う処だったが、人格者のSKさんでもそういう事も有りらしい。老後を互いに支え合って暮らす事にしたと言うから、ともかく、暗い話の多い世間で、新年早々に聞く、おめでたい話。今は奥さんは埼玉の方の家にいるそう。御結婚おめでとうございます。

 

翌朝は晴天。私もSMさんも石打丸山で滑るのは初めて。SKさんの案内で滑り始める、朝の雪質はいい。気持ち良くSKさんを追う。SKさんは去年2度大きな手術をしている。彼の健康、体力を心配していたが全く心配なさそう、それどころか強力に他の二人を先導して引っ張り始める。

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石打丸山スキー場の夜明け

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ゲレンデ沿いに食事処が並ぶ

このスキー場のリフトは短めのが多数ある。それだけコースの種類も多いのだが、滑ったらすぐにリフトで休めるのがいいというSMさんは、暖かい三島に住み、帰国以来3年ぶりのスキーで、今日が初日。明日は、かなりの筋肉痛が予想される。そんな心配を無視するかのように、ガンガン飛ばすSKさん。早々とSMさんが不満を言う。「ちょっと、もっとスローダウンするよう言ってやってよ」「ここはトイレ作戦でいくかね?トイレ行きたくなってきたで、休憩に持ち込む?」SMさんと密談で計画を練る。

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         眼下に米どころ南魚沼の平野が広がる

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              SM さん(左)と私
ゲレンデ上に10軒くらい休憩、食事の出来るお店が並ぶ。居酒屋まであってそれぞれの規模は赤倉より小さめだが、これだけチョイスがあると嬉しい。「今は丁度混んでる時間だから」「もう少し」、「もう少し」と、なかなか休ませてくれないSKさん。「地獄の特訓だぁ」と、ペースの落ちるSMさんを、さらにシゴくSKさん。いろんなお店があるが、週末なので結構混んでいる。選んだのはイタリアンのお店で、パスタとビール。

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SKさん

f:id:skizanmai:20220116112413j:plain午後からは雪は幾分硬いが、今日の天候は悪くはない。これからまだ数日続くスキー、初日から飛ばし過ぎか。

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f:id:skizanmai:20220116092126j:plain部屋に帰って、混む前に大浴場へ。その後、お風呂の前に部屋で外した私の腕時計が無いとひと騒動。思わぬところから出てきた。これで安心して飲めると、ワインの買い出しにマーケットへ行く。今日は鳥鍋。SKさんが自分で作った鳥とサーモンの燻製など、『いないないバー』の再開で居酒屋のようなSKさんの料理が出て来るのでお酒が進む。

 

私の時計騒動に限らず、SMさんも、シャンプーが、眼鏡がどこかに行ったとひと騒動、なくしものを探す時間が増えるのは、老化の兆候か。大概何処からか出て来るから、これもまた受け入れないとね。

 

翌朝、「SMさん、身体の具合はどう?足が痛いでしょう?」と聞くと「全然」「あぁ、SKさんシゴキが足らなかったようですよぅ!」窓の外を見て「きれいな雪景色」心洗われる思いと言うSKさんに「ごしごしと洗わなないとね」と毒づく私。

 

朝から重く湿った雪が降っている。ゲレンデに出ると久しぶりの新雪で挑戦のし甲斐がある。そんなに深い雪でないので上の方は滑り易く、嫌いではない。月曜の今日は、昨日と打って変わった空いたゲレンデ。レストランも今日は空いていて何処でも選び放題。ゲレンデにある「居酒屋」での昼食は1000円でランチ定食にビールがついてくる。ここのスキー場は下に食事の出来る街が無いので、そのぶんゲレンデ沿いに様々なお店がならぶ。

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上に行くほど雪は軽くなり、10cmほどの新雪の中を気持ち良く滑れる。コースの横にはかなりの柔らかな雪が残っている。どんどん滑りたいSKさんと、何とか早く休みたいSMさんとの間で調整役をする私。

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           SMさん、やればできる子です

f:id:skizanmai:20220117094647j:plain2時半にはあがり大浴場へ。今日は週末も終わり、大浴場も我々を入れて6名とガラガラ、、、と思ってサウナに入ろうとしたら、入浴客がほぼ全て狭いサウナに集まっていて、サウナからは早々に退散。今夜も斎藤さんが美味しい食事を作ってくれる。美味い酒、気の置けない友人、最高の組み合わせ。先日やっと世間並みに電話をスマホに買い替えたSKさんはラインをセットして文明人の仲間入りする為に奮闘中。

 

18日の朝7時、湯沢から赤倉に向けて出発。外は猛吹雪。30cmほどの雪に埋もれた車を掘り出し、出発。視界も良くない。高田から妙高までは雪の為、高速が閉鎖されていて、下の道を行く。新井の道の駅はまだ開いていなくて、唯一開いていた「すき屋」で少し早い昼食をとる。晴れていたら3時間かからない距離を5時間半かかって妙高の金甚に着いたのは12時半。金子さんが待っていてくれて、手配していただいた格安の3日分スキーチケットを受け取りゲレンデへ。集合時間は1時から、1時半に変更になったと聞いて、なんとか間に合いそう。

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f:id:skizanmai:20220118074529j:plainゴンドラで上がり、エーテルで地元の仲間と合流。高校の同級生が中心のスキー仲間で、今日はH君夫妻と、K君、ゲストのM医師の顔ぶれ。金甚の金子プロにレッスンを受ける。レッスンは順番に滑りながらゆっくりとしたSMさんにもいいペース。今回のテーマは姿勢を低く外脚100%で入るターン。昨シーズンのレッスンを思い出し、さらに新しいレッスンを受ける。後でI君も加わる。

 

夕飯前に、距離を置いて、話す時はマスクをして、寒くても窓を少し開けて換気に努める、という条件の元、一番大きな部屋である我々3人の部屋でウェルカムドリンクと乾杯。陶芸、スキー、料理、アートと何でもプロのように器用にこなすダジャレのSKさんのマンモスでのBBQ用の肉を熊に食べられてしまった話。そういえばSMさんはマンモスでドア越しに熊と押しくらまんじゅうをしている。

 

SM さんはスキーでたまたまリフトで同席しただけの知らないアメリカ人を夕食に呼んで、私が日本食を料理してご馳走したことが何度もある。SMさんは外人受けが良く、スイスで会ったホテルやバーのオーナーに気に入れられ、以降のドリンクが無料になり仕事後の従業員の飲み会にまで招待された話。痛風がでても、松葉杖を突きながらメキシコのリゾート地にいったら航空会社、ホテルでVIP待遇を受けた話などなど。

 

我々の酒の上の失敗談から成功談まで、世界中での楽しい思い出の一部を披露して、驚かれるやら、呆れられるやら。今回は、私の用意できる最強メンバーの中からの二人であり、私が上手く寸胴鍋で煮込んで、かき混ぜて二人のいい味を出してあげるのですから、驚かれて当然でしょう。

 

翌19日は朝から快晴。朝日が妙高に当たり、SMさんは初めて目の前に観る妙高の姿を拝む。朝食時、「昨夜はうちのお年寄り連中が節操も無く酔っぱらって失礼がありましたら申し訳ありませんでした」と皆さんに謝ると、「皆さん、凄い人たちですね」と称賛(?)の嵐。とうぜん「あなたが一番酔っぱらっていたでしょうが」と先輩方からは非難の嵐。

先輩諸氏にも失礼いたしました、、かも。

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朝食の後、金子さんの入れたコーヒーをいただいてからスキーの準備

今日はホテル金甚に泊まったプロスキーヤー岡部哲也、丸山貴雄プロが、金甚のオーナーでありもとデモンストレーターの金子裕之さんと朝からSKITV用のビデオ撮りをすると言うので見学に行く。朝のコンデションは、私が日本に帰国して一番の雪と青空のスキー日和。目の前の新雪の斜面をすっ飛んでいき、更に高速ショートターンでショーオフするプロスキーヤー達。いいものを見せて頂きました。

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岡部プロが滑っているのですが、小さくしか撮れていない

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              撮影隊の皆さん

もともと我々のレッスンの予定が先にあったので、撮影終了後、プロの皆さんに「金子さんをお貸しして頂き有難うございます」と言われた。そして、11時から金子さんのレッスン。12時過ぎにランチを食べながら、アメリカにいるスキーヤーで友人のKさんにラインで挨拶。

午後からまた2時間近いレッスン。金子さんレベルのスキーレッスンを受ける機会はめったになく、誰もが経験出来る事ではない。イタリアスキーツアーで会った新潟市からのスキーヤー達と私も一緒に飲む機会のあった有名な海和俊宏プロとも交流のある金子さんとは、H君が長い付き合いで、我々はかなりの特別優遇を受けている。

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             金子さんのレッスン

今日は一番人気の第三リフトが停まってしまった。我々が乗っている時でなくて良かった。暫くして、ゆっくりと動き出したが、翌日も完全停止だった。

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エートルでランチ

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集合写真撮影

お風呂にはいり、夕食前後、今日も、寒くても換気をしっかりやり、話す時はマスク、を徹底して大部屋で乾杯。夜9時ごろから金子さんに招待されて、談話室モンブランで密にならない様に飲み会。

 

赤倉最後の日は、10時から金子さんが一緒に滑ってくれる。今朝は、ふわふわの『ザ・深雪!』という雪で、こんなふわふわの雪を滑れる機会はめったない。SMさんは3年ぶりで、今回が初滑りであり、5日間の連続滑りは堪えている。「もうマンモスの一年分を滑ったよね」というSMさんはマンモスには滑りに行くより飲みに行っていた方。さすがに五日連続は疲れるのも無理はなく、大人しい。参ったタヌキは目で判る、参ったSさん目で判ると、もう休みたい『休ませろ~ぅ』と、私に目で訴えてくる。「それではこれで、解散しますと」言われた時は一番元気になって、解き放されたポチのように駐車場へと降りていく。

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       金子さんが一緒に滑ってくれた

駐車場で、皆さんに、一緒に滑らせていただいたお礼を述べて、雪道を走り、湯沢に戻る。途中、今月2日に100歳になった、私の母親に顔を見せに高田の実家に数分間寄る。湯沢への道はほとんど雪道。無事に夕方まだ明るい内に湯沢のSKさんのマンションへ戻った。

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             雪の高田城の櫓層

最終日、今朝も湯沢の外はかなりの大雪。佐野さんはもう滑らないと言うが、私は目の前に雪とゲレンデがあるのに滑らないチョイスはない。シーズンチケットを持つSKさんが付き合ってくれて、ゲレンデにでる。深雪に入ると動けないほど湯沢の雪は赤倉に比べると重く湿っているのが実感できる。雪が降ったり、上がったり。時たま風が止むが、視界も悪く厳しい豪雪の中のスキー。2時間ほどのスキーで、11時に上がり。荷物を整理して、湯沢駅前でヘギそばをたべ、SMさんを駅に見送る。「楽しかったね、またね!」

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ヘギそば屋さんで

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SKさんをマンションにおろし、私は一人、雪の中を新潟市に帰る。長岡まではまた猛烈に雪が降っていた。

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世間離れした数日間を過ごしていたが、この一週間で、更にオミクロンの感染は広がり、日本中は大変な事になっていた。オミクロンは風邪ではない。甘く見ないで、来月の赤倉行はキャンセルして、しばらくは新潟市近郊のスキー行きで過ごすつもりである。3度目のワクチン接種まで、気をひき締めて過ごし、またの再会が出来るよう願い、一週間の楽しかった今回の雪国の物語はこれで終了です。

 

WEBサイト: スキー三昧 イン カリフォルニアスキー三昧 (skizanmai.com)

で2012年以前のスキーエッセイがご覧になれます。